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TOPICS 2016/01/29 勝目力也選手コラボ秘話

勝目力也選手コラボ秘話

SUPLEX × 勝目力也スペシャルコラボ「V2」Tシャツ。この度のオファーを快くお引き受け頂いた勝目力也選手(防大教)のご紹介と製作秘話を皆様にご紹介します。 そして皆様もご存知のとおり、勝目選手は2015年アテネ・ギリシャで開催した世界ベテランズ選手権のカテゴリーB(41-45歳)63kg級において見事2連覇を成し遂げた、日本マスターズ界のエース。 しかしその連覇の道は決して平たんなものではなく、まさにいばらの道でした。

■世界の壁を知る
世界ベテランズ選手権初出場は2009年。カテゴリーA(35~40歳)63kg級で5位入賞。世界の壁を肌で感じた大会でした。続く2010年には同63kg級で3位入賞。帰国後、仕事とトレーニングの両立や練習環境の見直しをした。年数回の合宿で徹底的に身体を鍛えた。 そして満を持して臨んだ2014年8月。 セルビア・ベオグラード世界ベテランズ選手権カテゴリーB(41~45歳)63kg級に出場し3試合圧勝の勝利で悲願の初優勝を遂げた。 周囲には「オレは世界一を獲るまで選手生活を続ける」と並々ならぬ執念が支えとなった。そして沼津学園(静岡・現飛龍高校)時代の恩師井村陽三監督への恩返しもチカラになった。 そんな圧倒的な強さを誇った勝目選手にも不安材料が頭を悩ました。それは出発直前に内転筋の肉離れや、腰に抱えた持病(神経腫瘍)。それでも治療や持ち前の「負けず嫌い」で自らを鼓舞し初優勝を成し遂げた。

■エリート街道
レスリングを始めたきっかけは、名門で知られる静岡・沼津学園高校(現飛龍高校)の井村陽三監督との出会いだった。相撲で鍛えた腰の強さを生かし、2年生(1991年)でインターハイ王者へ成長。翌年同大会でも優勝し2連覇を達成した。 卒業後は鳴り物入りで山梨学院大学へ入学。全日本学生選手権グレコローマン52kg級で3連覇。オリンピック出場を誰よりも期待された選手に。大学卒業後はALSOK綜合警備へ就職し企業レスラーとして五輪優勝を目指した。

■挫折と病
高校大学時代とうってかわり、全日本の舞台では優勝に縁がなかったどころか、天皇杯(全日本選手権)ではメダルを逃すといった長いスランプが続いた。そんな勝目選手に追い打ちをかけるように、同級生の活躍や2001年には違和感を感じていた腰に神経腫瘍との診断結果が下された。医師には「下半身不随になることも覚悟して下さい」と告知される程の重症。退院後は2ヶ月に及ぶ松葉杖生活。苦しいリハビリ生活にも耐え社会復帰できるまでに至ったが、今でもその後遺症が残っている。

■引退はない
家族の為を考えれば考える程「引退」の2文字が頭をよぎる。しかし幼少時代から培った負けず嫌いが邪魔をした。このまま病気を理由に負けたと思われたくない。この気持ちがカンバックに向けた起爆剤となった。 そして2年後の全国自衛隊選手権。周囲が見守る中、学生時代からの指定席であった表彰台のど真ん中に勝目選手はいた。

■井村イズム
世界2連覇達成 シニアでは世界一の夢を果たせなかった勝目選手。次に掲げた目標はマスターズで世界チャンピオンになることだった。そしてある人に恩返しをしたかった。それは沼津学園レスリング部の恩師井村先生だった。 3年間誰よりも自分のことを想い本気で指導してくれた。「オリンピックに先生を連れて行く」高校時代、井村先生と交わした約束は最後まで叶えることは出来なかった。でもマスターズの「世界チャンピオン」で恩返しにしたいと前向きに考えられるようになった。 井村先生の口癖は「圧倒的な強さで勝て。守るなことなく攻め続けろ!」だった。 この言葉を胸に3度目の世界ベテランズ選手権に挑み闘った結果、全試合圧勝から悲願の初優勝に繋がり、翌年の同大会で2連覇を達成した。過去世界ベテランズ選手権大会で2連覇を成し遂げた日本人選手は、1992・93年に優勝した八田正朗さん、宮内孝憲さんに続き3人目の快挙であった。

■マスターズの起爆剤
今年1月の全日本マスターズ選手権当日。勝目選手に「SUPLEXとのコラボTシャツを作りたい」と打診したところ「明日優勝したら頼むよ」と言葉がありました。勝目選手の階級は過去に例がない程の激戦区。結果、強豪選手に敗れ惜しくも準優勝。「ごめん。負けた。」そんな一通のメールが悲痛な叫び声に聞こえました。 それでも弊社の熱い気持ちに押され、最後は「宜しくお願いします」と今回のコラボTシャツの企画を快く了承して頂きました。そして「このTシャツが全国のおっさんたちの励みになってくれたらいいね」と笑顔で語ってくれました。 国内で敗れたものの、今年は世界ベテランズ選手権「3連覇」の期待がかかる勝目選手。 「次は本来の階級だから負けねーよ!」 世界一強い「ちょいワル親父(レスラー)」の笑顔が頼もしく感じた瞬間でした。

森コウジ=文